「ウェルネスツーリズム」という言葉を聞いて、
どんなイメージを持つでしょうか。

ヨガや瞑想、スパ、自然の中でのリトリート。
心や体を癒す、少し特別な旅。
そんな印象を持つ方も多いかもしれません。

もちろん、それも一つの側面です。
ただ、私が取り組んでいるウェルネスツーリズムは、
一般的に想像される「癒しの観光」とは、少し立ち位置が違います。


観光とウェルネスツーリズムの決定的な違い

観光は、
「非日常を楽しむこと」
「気分転換をすること」
を目的とした旅です。

景色を見る。
名所を巡る。
美味しいものを食べる。
写真を撮る。

それ自体は、とても大切な体験です。
そして多くの場合、観光は
その場で完結する体験でもあります。

観光地があり、
食事があり、
温泉があり、
体験プログラムが用意されている。

旅人は、すでに準備されたものを受け取り、
順番に消費していくことで、
満足感を得ることができます。

だからこそ、
分かりやすく、安心して楽しめる。
その場で「楽しかった」と完結できる。

観光とは、そうした構造を持った旅だと言えるでしょう。


一方で、ウェルネスツーリズムは、
それとは対極にある立ち位置にあります。

何かを与えられるというより、
その場で、自分自身の感覚が立ち上がってくる

用意された正解を受け取るのではなく、
その土地や人、文化との関わりの中で、
体験そのものが形づくられていきます。

参加する。
関わる。
感じ取る。

だからこそ、
ウェルネスツーリズムは
その場で終わらず、
日常に持ち帰れるものが生まれるのだと思います。


なぜ今、ウェルネスツーリズムが必要なのか

現代は、情報も選択肢も多く、
常に判断を求められる時代です。

仕事でも、家庭でも、
「正しく判断すること」
「成果を出すこと」
が当たり前に求められます。

その状態が続くと、
知らないうちに余白がなくなり、
自分の感覚よりも、
役割や期待を優先する時間が増えていきます。

休みを取っても、
疲れが取れきらない。
リフレッシュしても、
すぐ元の状態に戻ってしまう。

そう感じている人は、
少なくありません。

ウェルネスツーリズムは、
そうした状態に対して、
一度、距離を取る時間を意図的につくります。

逃げるための旅ではなく、
戻るための旅です。


ウェルネスツーリズムが扱うもの

私が考えるウェルネスツーリズムでは、
次のような要素を大切にしています。

  • その土地の時間の流れ
  • 人の暮らしや文化
  • ものづくりや手仕事
  • 五感を使う体験
  • 誰かと同じ場を過ごす時間

派手なプログラムや、
特別なスキルは必要ありません。

むしろ、
ゆっくり歩くこと。
話を聞くこと。
手を動かすこと。

そうした、日常に近い行為の中で、
自分の速度が整い、
感覚が戻ってくる。

それが、ウェルネスツーリズムの入り口です。


「癒し」ではなく「再生」という視点

ウェルネスツーリズムを
単なる癒しやリフレッシュと捉えると、
どうしても「一時的な体験」になりがちです。

私が重視しているのは、
再生という視点です。

回復は、
疲れた状態がニュートラルに戻ること。

再生は、
その先の生き方や働き方に、
静かな変化が起きること。

ウェルネスツーリズムは、
この再生が始まるための
土台を整える時間だと考えています。


観光でも、研修でもない「間」の時間

ウェルネスツーリズムは、
観光とも、研修とも、
完全には重なりません。

知識を学ぶ場ではない。
成果を出す場でもない。

けれど、
仕事や生活を続けていくために
欠かせない「間(ま)」の時間です。

判断を急がない。
結論を出さなくていい。
ただ、自分の状態を確かめる。

その余白があることで、
人はまた日常に戻っていける。


これからのウェルネスツーリズム

4月から、
私はウェルネスツーリズムを
仕事として本格的に展開していきます。

地域の文化やものづくり、
専門家の知見、
企業や働く人の課題。

それらを切り分けるのではなく、
つなぎ直す形で設計していく予定です。

このコラムでは、
その背景や考え方を、
少しずつ整理していきます。

次回は、
「回復」と「再生」の違いについて、
もう少し具体的に掘り下げていきます。