中小企業の育休・両立支援は「誰かが休んでも回る会社づくり」へ|属人化対策・人材育成・BCPから考える

育児休業や介護休業の制度を整え、社員にも案内している。

それだけで「両立支援はできている」と考えてはいないでしょうか。

2026年9月、厚生労働省の労働政策審議会では「仕事と育児の両立支援」が議題となりました。

その資料では、育児休業による欠員に対して、代替要員の確保や職場の負担増加が企業の課題として挙げられています。

ここで中小企業が考えたいのは、「育休を取れるか」だけではありません。

誰かが休んでも、休む本人にも、残る社員にも無理が出ず、仕事が回る会社になっているか。

実はこの視点で考えると、両立支援は育休制度だけの話ではなくなります。

属人化対策、人材育成、社員の健康、定着、そしてBCP。

会社の「人」と「事業」を支える、経営課題につながっていきます。

「制度がある=両立できる会社」ではない

仕事と育児・介護を両立するための制度は、法改正などによって拡充されてきました。

もちろん、制度を整えることは大切です。

しかし、従業員20〜50名程度の中小企業では、一人が一定期間抜ける影響は小さくありません。

たとえば、

「制度はある。でも、その人が休むと仕事が止まる」

「育休を取ってもらいたいけれど、ほかの社員への負担が心配」

「欠員が出ると、結局は管理職や社長が仕事を引き受けている」

こんな状況はないでしょうか。

制度上は休めても、実際に仕事が回らなければ、本人は「周囲に迷惑をかけるのでは」と休業を申し出にくくなるかもしれません。

一方、残る社員に仕事が集中すれば、その人たちの負担が増えていきます。

ここで考えたいのは、休む社員の問題ではありません。

「一人が抜けること」を想定した仕事の仕組みになっているか。

見るべきなのは、会社側の仕事の持ち方です。

なぜ、一人休むだけで仕事が回らなくなるのか

誰かが休むと一気に忙しくなる会社では、普段から特定の人に仕事が集まっていることがあります。

「この取引先のことはAさんしか分からない」

「この作業はベテランのBさんしかできない」

「トラブルが起きると、結局すべて部長に集まる」

平常時は、それでも仕事が回ります。

経験のある人に任せたほうが早いため、むしろ効率的に見えることもあります。

ところが、その人が育休や介護、病気などで一定期間休むと、今まで見えていなかった問題が表に出ます。

たとえば、

  • 仕事の進め方や判断基準が共有されていない
  • 必要な情報が担当者のメールや頭の中にある
  • 代わりに担当できる人が育っていない
  • 困った仕事が管理職や社長に集中する

こうした状態です。

さらに欠員が出たとき、これまでと同じ仕事量を残った人数でこなそうとすれば、当然、一人ひとりの負担は増えます。

つまり、「育休を取る人がいるから大変」なのではありません。

普段から一人に仕事が集中していることが、休業をきっかけに見えるようになるのです。

だからこそ、両立支援では休む人だけを見るのではなく、会社全体の仕事の持ち方を見る必要があります。

両立支援は、属人化対策からBCPまでつながる

EnLinksでは、両立支援を単独の福利厚生施策とは考えていません。

大切なのは、次のつながりです。

両立支援 → 属人化対策 → 人材育成 → 健康 → 定着 → BCP

社員が安心して育休や介護休業を取るには、「その人しかできない仕事」を減らしていく必要があります。

そのためには、仕事を整理し、情報を共有し、複数の人が対応できる状態をつくらなければなりません。

そこで必要になるのが、人材育成です。

「担当者が休むことになったから、急いで誰かに教える」のではなく、普段からほかの社員にも仕事を任せ、経験する機会をつくる。

それは単なる「代役づくり」ではありません。

次の担当者やリーダーを育てることにもつながります。

さらに、欠員を残った社員の残業や頑張りだけで埋める状態を減らせれば、特定の人への過度な負担も防ぎやすくなります。

無理なく働き続けられる環境をつくることは、社員の健康や人材の定着にも関わります。

そして、この考え方が必要になるのは育休だけではありません。

介護、病気、けが、家族の事情。

さらには、経営者やキーパーソンが突然働けなくなることも考えられます。

「いつもの人がいなくても仕事を続けられる状態」をつくることは、そのまま事業継続への備えになります。

つまり、両立支援をきっかけに属人化を見直すことは、BCPの視点でも重要なのです。

「休める制度」から「休んでも回る仕組み」へ

では、中小企業は何から始めればよいのでしょうか。

まず必要なのは、新しい制度を増やすことではありません。

今の仕事を見えるようにすることです。

誰が、どの仕事を担当しているのか。

その人しか分からない仕事はないか。

もし明日から休むことになったら、誰が代わるのか。

そもそも、その仕事は欠員が出ても同じように続ける必要があるのか。

こうして業務を棚卸しすると、会社の「止まりやすい場所」が見えてきます。

次に、仕事の手順や判断基準、取引先の情報、データの保存場所などを共有します。

最初から完璧なマニュアルを作る必要はありません。

まずは、担当者以外でも最低限の対応ができる状態を目指します。

そして、普段から複数の社員が仕事を経験できるようにしておく。

これが、属人化対策と人材育成を同時に進めることにつながります。

もう一つ重要なのが、欠員時の仕事量です。

誰かが休んだとき、残った社員へ仕事をそのまま振り分けるだけでは、負担は減りません。

何を続けるのか。
何を減らすのか。
何を一時的に止めるのか。

ここまで決めておくことが大切です。

休む人が安心して休めること。

そして、残る人にも無理が集中しないこと。

この両方がそろって初めて、「実際に使える両立支援」になります。

あなたの会社は「一人休んでも回る会社」ですか?

ここで一度、自社を振り返ってみてください。

「社員が一人、明日から1か月休む」としたら、どうなるでしょうか。

  • 特定の社員しか分からない仕事がある
  • 担当者が休むと、管理職や社長が仕事を引き受ける
  • 業務手順や顧客情報が十分に共有されていない
  • 代わりに担当できる社員が決まっていない
  • 欠員が出ても、仕事量や優先順位をほとんど変えない
  • 「この人に休まれると困る」と思い浮かぶ人がいる

一つでも気になる項目があれば、見直すべきなのは育休制度だけではないかもしれません。

両立支援を入口に、仕事の持ち方や情報共有、人材育成まで見直す。

それが、育児だけでなく、介護や病気などさまざまな事情があっても、人が働き続けられる会社づくりにつながります。

まとめ|誰かが休んでも回る会社は、普段から強い

育休を取得できる制度を整えることは大切です。

しかし、中小企業が考えたいのは、その先です。

誰かが休んでも、本人が必要以上に職場へ気兼ねせず、残る社員にも無理が集中せず、事業を続けられる。

そんな状態をつくるには、両立支援を制度だけの問題にしないことが重要です。

属人化を減らす。
人を育てる。
仕事を共有する。
社員の負担を減らす。
そして、人が抜けても事業を続けられるようにする。

育休への対応をきっかけに仕事の仕組みを見直すことは、「休む人のため」だけではありません。

人が働き続けられ、会社も持続していくための組織づくりです。

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参考資料・出典

厚生労働省「第91回労働政策審議会 雇用環境・均等分科会」(2026年9月1日)
「仕事と育児の両立支援について」を議題として検討。

厚生労働省「仕事と育児の両立支援について」
育児休業取得による欠員時の代替要員確保や職場負担の増加などについて記載。

厚生労働省「仕事と介護の両立支援」
企業向けの両立支援ガイドや実務ツール等を掲載。

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