人手不足の中小企業が「採用だけ」に頼らないために|今いる人が働き続けられる会社をつくる人材戦略

人手不足対策を「採用」だけで考えていませんか?

「求人を出しても応募が来ない」

「やっと採用できても、なかなか長く働いてもらえない」

「人が足りず、今いる社員の負担が増えている」

こうした悩みを持つ中小企業は少なくありません。

厚生労働省の調査では、2026年8月時点で、正社員などの人手不足を示す数字が**「+47ポイント」**となりました。

これは「人が47%足りない」という意味ではありません。

「人が不足している」と答えた事業所が50%、「人が余っている」と答えた事業所が3%で、その差が47ポイントだったという意味です。

また、日本商工会議所・東京商工会議所の2026年の調査では、中小企業の60.0%が「人手不足」と答えています。

従業員21人以上の会社では、その割合は約7割です。

人が足りなければ、「もっと採用しなければ」と考えるのは当然です。

しかし、人を採ることだけで人手不足を解決し続けるのは、簡単ではありません。

そこで大切になるのが、

「新しい人を採る」だけでなく、「今いる人が働き続けられる会社をつくる」という考え方です。

「採る」だけでなく「辞める人を減らす」ことも人手不足対策

1人を採用しても、1人が辞めれば、会社で働く人数は増えません。

特に、従業員20〜50人ほどの中小企業では、1人が辞めるだけでも大きな影響があります。

その人しかできない仕事があれば、残った社員が代わりにやらなければなりません。

すると、ほかの社員の仕事が増えます。社長自身が現場の仕事を抱えることもあるでしょう。

忙しさが続けば、さらに別の人が辞めてしまうことも考えられます。

だから、人手不足対策では、

「何人採用するか」と同じくらい、「今いる人にどうすれば長く働いてもらえるか」を考えることが大切です。

2026年版中小企業白書でも、人が定着している中小企業では、給料だけでなく、休みを取りやすくする、残業を減らす、柔軟な働き方を取り入れる、といった取り組みをしている傾向が示されています。

「採用」と「定着」は、別々の問題ではありません。

働き続けることが難しくなる理由は「病気」だけではない

社員が働き続けることが難しくなる理由は、病気や心の不調だけではありません。

たとえば、

  • 子育て
  • 家族の介護
  • 自分自身の通院や治療
  • 年齢や体調の変化

などがあります。

2026年の日本商工会議所・東京商工会議所の調査では、育児や介護などで働き方への配慮が必要な人や、休業している人がいる企業は58.0%でした。

社員本人は「仕事を続けたい」と思っていても、生活の状況が変われば、これまでと同じ時間に同じように働くことが難しくなる場合があります。

そこで、

「今までどおり働けないなら、辞めてもらうしかない」

となってしまえば、会社は経験や技術を持つ大切な人材を失うかもしれません。

人手不足の会社ほど、「今までどおり働くか、辞めるか」の二つだけにしないことが大切です。

「少し仕事を抜ける」ことができる会社にする

毎日、全員が同じ時間に働かなくても、仕事を続ける方法はあります。

たとえば、出勤時間をずらす。働く時間を短くする。休みを取りやすくする。仕事の量や役割を調整する。

仕事の内容によっては、テレワークを取り入れる方法もあります。

育児については、2025年10月から改正育児・介護休業法により、3歳から小学校に入る前までの子どもを育てる社員に対して、会社が複数の柔軟な働き方を用意することも求められています。

ただし、制度をつくるだけでは十分ではありません。

たとえば、

「この人が休んだら仕事が止まる」

「担当者しか、仕事がどこまで進んでいるか知らない」

「ほかの人に仕事を渡すだけで何日もかかる」

こんな状態では、せっかく制度があっても使いにくいからです。

「その人しかできない仕事」が多くありませんか?

特定の人にしかできない仕事が多い状態を、「属人化(ぞくじんか)」と呼びます。

2026年の中小企業調査では、仕事と育児・介護などの両立を支えるうえで、最も多かった課題が「その人の仕事をほかの人がカバーするのが難しい」42.8%でした。

これは育児や介護だけの問題ではありません。

「お客さまの情報を担当者しか知らない」

「仕事のやり方が、その人の頭の中にしかない」

「ベテラン社員がいないと仕事が進まない」

こうした状態で誰かが休むと、ほかの社員に大きな負担がかかります。

反対に、仕事のやり方を整理して、情報をみんなで共有しておけば、ほかの人が少しずつ仕事を助けられます。

これは育児や介護への対応だけではありません。

病気や休暇、突然の退職、新しく入った社員の教育にも役立ちます。

誰かが休んでも仕事が回る会社をつくることは、会社を守ることにもつながります。

「やった方がいい。でも時間がない」が大きな壁

「社員に長く働いてもらうことも、人を育てることも大切なのは分かっている。でも、そんな時間がない」

中小企業では、この問題もよく起こります。

人が足りない。

だから毎日の仕事が忙しい。

忙しいから、社員を育てたり、仕事のやり方を整理したりする時間がない。

その結果、一部の人に仕事が集まり、さらに忙しくなる。

このような悪い流れが生まれてしまいます。

2025年版中小企業白書でも、人材育成を十分に増やせていない会社では、「育成する時間がない」「教える人が足りない」といった課題が多く挙げられています。

だからといって、新しい取り組みを一度にたくさん始める必要はありません。

まずは、今いちばん困っている「人の問題」は何かを決めることから始めてみてください。

採用・定着・健康・育成は、実はつながっている

採用、離職対策、働き方、人材育成、社員の健康。

これらをすべて別の問題として考えると、やることばかりが増えてしまいます。

たとえば、

「ベテラン社員にしかできない仕事がある」

という会社があったとします。

この場合、必要なのは新しい人を採ることだけではありません。

✓ 仕事のやり方を書き出す。

✓ ほかの社員にも仕事を教える。

✓ 一人に集まっている仕事を分ける。

✓ 休んでも仕事が回るようにする。

こうした取り組みも必要です。

また、

「親の介護が始まったら、会社を辞めるしかない」

と考えている社員がいるかもしれません。

その場合も、介護のための制度を知らせるだけでは十分とは限りません。

働く時間を一時的に短くしても、その人が仕事を続けられるような会社の仕組みが必要です。

ここで役立つ考え方の一つが健康経営です。

EnLinksでは、健康経営を「社員を健康にする活動」だけとは考えていません。

人が長く働き続けられ、会社も安定して続いていくために、人と組織の問題を整理して改善していく人材戦略・経営戦略として考えています。

採用、定着、働き方、健康、人材育成。

これらをバラバラに考えるのではなく、自社の経営課題からつなげて考えていくことが大切です。

まずは「今年、人について何を一つ変えるか」

最初から完璧な人事制度をつくる必要はありません。

まずは、自分の会社について考えてみてください。

  • 辞められたら一番困る人や仕事は何か
  • その人が1か月休んでも仕事は回るか
  • 育児・介護・治療などで働く時間が短くなっても、仕事を続けられるか
  • 社員が休んだとき、ほかの人が仕事を手伝えるか
  • 採用・定着・育成の中で、今年一つ変えるなら何か

会社によって、答えは違います。

求人の方法を変えた方がいい会社もあるでしょう。

一人に集まっている仕事を減らした方がいい会社もあります。

休み方を見直したり、上司と社員が話す機会を増やしたりすることが必要な会社もあります。

大切なのは、「健康経営のために何か新しいことを始めなければ」と考えることではありません。

自分の会社が困っていることから考えて、「人が働き続けられる会社」に一歩ずつ近づけていくことです。

まとめ|人手不足対策は「今いる人が働き続けられる会社」をつくること

人手不足の会社にとって、新しい人を採用することは大切です。

しかし、それだけが人手不足対策ではありません。

今いる社員が長く働けるようにする。

社員を育てる。

生活の変化に合わせて働き方を変えられるようにする。

誰か一人に仕事が集まりすぎないようにする。

体調を崩したときにも、すぐに退職しなくて済む会社にする。

こうした取り組みも、すべて人手不足対策です。

特に人数の少ない中小企業では、「人が働き続けられる会社」と「誰かが休んでも仕事が回る会社」は、セットで考える必要があります。

健康経営も、福利厚生を増やすためだけのものではありません。

人に関する経営課題を見つけ、整理し、一つずつ改善していくための仕組みとして活用できます。

人手不足の時代だからこそ、

「あと何人採用するか」だけではなく、「今いる人がどうすれば働き続けられるか」も考える。

それが、これからの中小企業に必要な人材戦略の一つではないでしょうか。

人に関する課題を、一度整理してみませんか?

「求人を出しても人が集まらない」

「社員が辞めるのを減らしたい」

「育児や介護をしながら働ける会社にしたい」

「特定の社員に仕事が集中している」

こうした悩みは、別々の問題に見えて、実はつながっていることがあります。

EnLinksでは、「健康経営を始めること」を最初の目的にはしていません。

まず経営者のお話を伺いながら、採用、離職、働き方、仕事の属人化など、自社が抱えている「人の問題」を一緒に整理するところから始めます。

「自社の場合、何から手をつければいいのだろう?」

そう感じている方は、30分無料個別相談をご活用ください。

参考資料・出典

厚生労働省「労働経済動向調査(令和8(2026)年8月)の概況」(2026年9月29日公表)

日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」(2026年9月15日公表)

中小企業庁「2026年版 中小企業白書」

中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第4節 人材戦略」

厚生労働省「柔軟な働き方を実現するための措置」

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